こんなに違う!油通しの効果&実践方法

 

中華料理は提供されるまでのスピードが、他の料理に比べて断トツに早いです。
それを可能にしているのは、食材に素早く火を通し、かつ旨みを閉じ込める「油通し」
というテクニックを使用している為です。

 

「油通し」は大量の油を使う為、家庭で実践するには敷居が高いと思われがちですが、
家庭向けにアレンジした手法もあります。

 

ぜひ、ここでご紹介する方法をマスターして、ワンランク上の中華料理を作ってみください。
一度、「油通し」で作った炒め物を食べたら病みつきになりますよ。(^ ^)

 

 

 

 

 

1: 2つの下加熱方法

 

一般的な下加熱方法には、「湯通し」と「油通し」の2つの方法があります。
下加熱の目的は、食材にあらかじめ火を通しておくことで「本加熱の時間を短縮する」、
「臭みを取る」、「味を含みやすくする」、等があります。

 

1.1 湯通し

湯通しとは、お湯に食材をくぐらせ7割程度火を通す方法を指します。
熱湯でゆでるケースもあれば、スープで下煮を行う場合もあります。
筍やレンコン、人参のような硬い野菜を湯通しすることもあれば、
チンゲン菜のように繊維がしっかりしており味を含みにくい野菜はスープで湯通しします。

 

1.2 油通し

油通しでは、野菜類の他に下味をつけた肉・魚に7割火を通す工程を指します。
揚げ温度は、一般的に野菜類は160℃〜180℃、肉類は110℃〜160℃とされます。

 

 

油通しのメリット

油通しには、次のような多くのメリットがあります。

 

  • 本加熱の時間を短くする
  • 食材から余計な水分が抜ける
  • 外側が固まり油を吸いにくくなる
  • 旨みが凝縮し、食感もよくなる
  • 煮崩れしにくくなる
  • 色鮮やかになる

 

油に数秒から数十秒通すだけで、ざっとこれだけのメリットがあります。
湯通しにないメリットも多くあり、味や見た目にこだわって調理するのであれば、
やはり油通しの方が断然おすすめです。

 

肉の油通し

まず、肉を油通しする際の温度と時間の関係を確認します。
肉は高温で揚げると収縮しやすいため、基本的に低温で揚げるのが普通です。

 

切り方 揚げ時間 揚げ温度
細切り 約20〜30秒 120〜160℃
角切り 約1分 120〜160℃

 

角切り肉を油通しする場合は、最初は110℃程から始めて徐々に温度を上げて
最後には160℃程で取りだします。すると、カリカリに仕上がり油切れもよくなります。
(鶏のから揚げの二度揚げと同じです。低温で火を通し、高温で水分を飛ばす)

 

また、肉を油通しする前に、溶き卵、片栗粉、油の3つで「衣」を作ります。
「衣」をつけることで肉がコーティングされ火の入りが穏やかになる為、硬くならずに
フワッとした食感になります。酢豚の角切り肉はカリカリになるまで揚げますが、
外はカリッとして、中は硬くならずに柔らかい仕上がりになります。

 

「衣」をつける際の注意点としては、溶き卵とデンプン量(片栗粉)のバランスです。
デンプンを入れ過ぎると強い糊となって肉同士がほぐれにくくなり、逆にデンプンが
少なすぎると肉の表面に膜ができず、吸い込んだ卵と調味料が流出します。

 

デンプンの適度な量としては、片栗粉を加えて混ぜた時にボウルの底に指の線が
残る程度であることを確認します。また、最後に植物油を加えて軽く混ぜることで、
油通しの際にほぐれやすくなります。

 

肉を油に投入する時は、固まらないように伸ばしながら入れるようにしましょう。
そして、菜箸で優しくかき混ぜて肉同士がくっつかないように注意します。

 

野菜の油通し

次に、野菜を油通しする際の温度と時間の関係を確認します。

 

野菜類も高温(200℃以上)で油通しすると、唐揚げになったりシワが寄って食感が
悪くなり、温度が低すぎると油を吸ってベタッとした仕上がりになるので注意が必要です。

基本的に160℃〜180℃程で素揚げするのが一般的です。

 

食材・切り方 揚げ時間 揚げ温度
ピーマン 5〜8秒程度 180℃
玉葱 10〜15秒程度 180℃
キノコ類 10〜15秒程度 180℃
根菜類(乱切) 約3〜4分 120℃

 

キノコは油通しすることで、炒め物等で油を吸う量を減らせますし良い香りも出ます。
いずれも、しっかりと野菜に含まれる水分を飛ばしてあげることが目的です。

 

人参やレンコンなどの根菜類を乱切りで使用する場合は、火が非常に通りにくいため、
油通しする際の温度は低めにします。高温度で揚げてしまうと表面のみ焦げてしまい、
中まで火が通りません。

 

また、野菜を油通しする場合は、「衣」は不要でそのまま素揚げします。
油から野菜を取り出すタイミングは、種類や切り方によって当然異なりますが、
目安としては、揚げている最中に食材の周囲から細かな気泡が立った時です。
(大きめの泡の時は、食材に含まれる水分が水蒸気となって出ている状態です)

 

油の温度の判断方法

 

菜箸を使用した、油の温度の判断方法は次の通りです。
(※菜箸は油に入れる前に一度水に濡らして、しっかり水気をふき取ります。)

 

油の温度 判別方法
150〜160℃
(低温)
菜箸の先から泡がジワーッとでる
170℃前後
(中温)
菜箸全体から泡がシュワシュワでる
180〜190℃
(高温)
菜箸全体から泡が勢いよくブクブクでる

 

 

油の温度のと火加減

 

油の温度とガスコンロの火加減の関係についても、簡単にご紹介しておきます。

 

油の温度 火加減
150〜160℃ 弱火。炎の大きさが、火元からナベ底の半分程度
160〜170℃ 中弱火。炎の大きさが、火元からナベ底の3/4程度
170〜180℃ 中火。炎の先が、ナベ底に届く程度
180〜190℃ 強火。炎が、ナベ底全体に届く程度

 

ちなみに、揚げ物や天ぷらでは中火(170〜180℃)で行うのが普通です。
火の調整はせず、具合を投入したら中火のままいじらないようにするのがコツです。

2: 家庭でできる「油湯通し」

 

油通しは、中華料理店のプロのコックさんが多用する下加熱のテクニックです。
高温の油で食材表面を固めて、食材の水分と旨みを内部に閉じ込めます。
また、炒める際には表面が固まっている為、食材の水分が流出しにくい為、
「シャキッ」とした食感が残り、普通に炒めるよりも美味しさが格段に向上します。

 

但し、難点は油を大量に使いますので、家庭では実践するのが難しいところです。
そこで、油通しの代わりにぜひ活用したい下加熱方法が「油湯通し」です。
「油湯通し」は、TV番組の「所さんの目がテン」で特集されたことで注目され、
家庭でも簡単に油通しと同等の効果が得られるということで話題となりました。

 

※「油湯通し」というフレーズは、筆者が名付けさせて頂きました。

 

<参考:所さんの目が点 1167回 中華料理ウマさの秘密 >

 

 

 

 

 

2.1 「油湯通し」の効果

鍋で沸かしたお湯に油を入れ食材をボイルします。食材を数十秒ボイルし、
半生(6〜7割火が通った状態)で掬いあげる際、お湯表面に張った油が
食材をコーティングする為、水分を内部に閉じ込めることができます。

 

その為、本加熱で炒めたあとも、普通に生の食材を炒めるよりも「シャキッ」とした
食感を残すことができます。とても手軽で油の量も大幅に節約することできます、

 

2.2 「油湯通し」を行う際の注意点

「油湯通し」を行う際の注意点は、油の量とボイルする時間の2点です。
投入する油の量は、お湯の表面積の8割を覆う位がベストとされています。
小さめの20〜24cmほどの鍋であれば、大さじ2杯の油が適量となります。

 

また、ボイスする時間も重要です。食材の6〜7割火を通すのが目的ですので、
キャベツやピーマンであれば30秒程、人参やレンコンなどの根菜であれば3分程、
など食材によって調整してみてください。可能であれば、複数の食材を一緒に
ボイルするのではなく、一つの種類ごとでボイルすると失敗しにくくなります。

 

2.3 「油湯通し」で作る定番メニュー

「油湯通し」を活用した定番メニューとしては、やはり炒め料理が挙げられます。
代表的なところとしては、肉と野菜をたっぷり使うチンジャオロース、回鍋肉、
酢豚などでしょうか。どれも「油湯通し」を活用して調理すると、家庭で作った
中華料理とは思えない程、美味しい仕上がりになります。

 

ぜひ、一度試してみてください。(^ ^)

3: まとめ

 

管理人が働いている社員食堂では、定食メニューで中華系の炒め物を提供する機会が
とても多いです。特に、チンジャオロース、回鍋肉、酢豚は定番中の定番メニューです。

 

特に、回鍋肉は50〜60人分を一度に作る為、大量のキャベツを下加熱しています。
その時に活用しているのが「油湯通し」の方法です。回転ガマに湯を沸かして油を張り、
ボイルするだけでよい為、油通しより手軽なため大変重宝しています。

 

炒め物を作る際は、いかに野菜の水分を流出させずに内部に留めるかが重要なので、
炒め物が上手にできなかった方は、ぜひ「油湯通し」を試してみてください。(^ ^)